雨はまだ降りは


 翌日は曇っていた。青空はごく少なくなり、じめていないが、太
陽の光は見えなかった。
 昼ちかく、電話がかかってきた。
「こちらは信用調査会社でございます。ちょっとおたずねしたいことがございます
。あなたは急に景気がよくなられたそうで、その事情をお教えいただきたいのです
。もちろん、おさしつかえがありましたら、お答えいただかなくてけっこうでござ
います」
「うむ、それは簡単には言えないな」
「けっこうで卓悅假貨 ございます。ついでですけれど、もうひとつ。最近ご交際をはじめら
れた女性について、できましたらお名前でも……」
「それは答えられないなあ」
 事実、説明のしようがないのだ。調査会社の人はあきらめて電話を切った。男は
ちょっと、いやなものを感じた。相手はいまの答をどう受取ったろう。誤解されな
ければいいが。
 なにか不安になり、それをまぎらそうと酒を飲んでいると、ドアのベルが鳴り、
出てみるとこのビルの管理人だった。中年のまじめそうな人物だ。こんなことを言
う。
「若い女のかたがおいでだそうで……」
「このあいだひとり遊びに来たよ。しかし、なんでそんなことを……」
「わたしのreenex 價錢事務所へ来て、そんなことをしきりに聞いていった人がいましたのでね
。なんでしょう。刑事かなにかじゃないですか」
「しかし、なぜ刑事と……」
「女の帰るのを見た人はいるかなんて聞いてましたよ。いいですか、犯罪のたぐい
は困りますよ。変なうわさも……」
「とんでもない」
 男は強く言い、帰ってもらった。不安がまた大きくなった。おれが金に困ってい
たことは、友人たちを聞きまわったらすぐわかることだ。あの女がやってきたこと
も、ビルのなかで見たと言う者が多いだろう。そして、急に景気がよくなったらし
いとも……。
 それらを結びつけると、どうなる。犯罪めいたものがひそんでいるとの印象を抱
く人だってでてくるだろう。結婚詐欺、さらには殺人などと……。
 男は背中につめたいものを感じた。さっきの調査会社のやつが、念のために警察
へ問い合せたのか辦公傢俱もしれない。彼は自分の立場を考え、身ぶるいした。そんなこと
はないとの反論ができないのだ。願いをかなえてやるとの電話、それと原因不明の
入金、さらに申し出たら美女が訪れてきた。名前を聞きそこね、いっしょにさわい
で帰っていった。こんな説明を、だれが信用してくれるだろう。疑いを深める役に
立つだけではないか。
 つじつまのあう形にするには、どうしたらいいのだろう。どうにも他人をなっと
くさせる構成の方法がない。警察で取調べられるかもしれない。そこであやふやな答をすれば、ますます嫌疑が濃くなる。では、どうすればいい……。
 男は酒を飲んだ。だが、その不安は消えなかった。気が小さい性格で、想像は悪
いほうへと進む。あの女がやってきてくれればいいのだが、いくら待ってもあらわ
れなかった。名前も住所もわからず、こっちからはさがしようがない。
「どうなるんだろう」
 つぶやき、酒を飲む。不吉な運命が近
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